©︎Satoshi Shigeta/繁田諭写真事務所
西洋世界の源流である古代ギリシャでは、アリストテレスによって、地・水・火・風・エーテルの五大元素説が唱えられ、東洋では、同様にお釈迦さまが宇宙(世界)は、この五つの要素で構成されていると説かれた。
『大地』は 果てしなく平らかに繋がっているので四角、『水』は 水滴や雨粒のように丸で表現される。『火』は その燃えゆく立ち上がりから三角、『風』は 呼吸をする時に鼻や口から出るので、月を半分にし丸い方を下に置く形となり、『空』は 擬宝珠、つまり、理想とされる虚空(分け隔てないとらわれない心)を広がる大空にたとえ、具現化されたものである。
古くは、密教により創始され、特に空海の影響が強く平安時代中期には五輪塔として形を成し、仏、菩薩が衆生を救済するためにおこした誓願を象徴するものとされ、さらには、近現代に至り、ご供養の折に、建立する塔婆となった(塔婆は、五輪塔のように型作りされている)。五輪塔や塔婆(現在一般的に使用される塔婆は板塔婆と呼ばれ、その原型は、角塔婆と言い、四面ある木製の柱材のようなものである)には、『発心門』と呼ばれる四面ある東側に梵字(サンスクリット語)で、それぞれの形の上に『地水火風空』と書かれる。
当寺の主たる4つの庭の一つである、東側に位置する庭園『発心の庭』には、清らかな水のせせらぎと共に、大地に根付く笹が風に触れ合い、この地球の地熱が作り上げた様々な形の石が点在し、広がる大空がある。私たちが感じる世界を仏教では『識(智・覚・心)』と言い、認識作用のことで、宇宙は物質だけではなく(五大要素)、そこに認識作用が加わってはじめて存在するとされ、人間もまた小宇宙であり、『六大』とされる。
この庭園に、ひと度 足を踏み入れ、様々な庭園を巡りつつ、それぞれの思いを馳せるきっかけとなってくれることを願うものである。